アメリカの携帯電話事情

最近ようやくガジェットとして楽しめるような携帯を入手した。Sony EricssonのC905aだ。サイバーショットフォンというやつ。8.1メガピクセルの写真が撮れるという、アメリカの携帯市場では飛び抜けたカメラ機能がついている。GPSがついているので撮った写真にジオタグを埋め込める。スピーカーはステレオで音が良い。FMラジオもついている。aというのはアメリカのことで、at&tとの契約で安く入手できる。905iだとインターナショナル版らしい。at&t版は、契約すればほぼタダで手に入るが、アンロックされたものは300ドル以上する。自分のはat&tの契約で手に入れたc905aだが、購入後にいろいろ機能を試しているうちに、もしかしてアンロックされたものを300ドル以上払って買ったほうがずっと幸せだったんじゃないかと思い始めてきた。

これまで使っていた携帯
これまでなんと、日本で使っていたV802SHをアンロックしたものにT-mobileやCingular→at&tSIMカードを差して使っていた。こちらではそれほど都会に住んでいる訳でもないし、移動も車だから日本にいたころにあった合計1時間超の電車通勤時間がない。だから、手癖のようになっていた携帯メールを使わなくなった。使うのはたまの電話とカメラだけ。電話だって、家や職場に居る時はSkypeを使うので、携帯電話はあまり使わない。こちらへ来た後に、興味本位でアンロックされた携帯電話を買ったことがある。そのころ(2006年当時)は、アメリカの携帯電話は惨憺たるもので、日本の2001年ごろを思い起こさせる機械ばかりだった。一応しょぼいカメラ付きの携帯を購入したものの、3Gはまだ十分に普及してなくて不安定だった上、データ通信はやたらと高いし、カメラの解像度は低いし、ディスプレイは粗いし、すぐに使わなくなった。で、802SHを今まで使い続けていたのだ。802SHは名機だったと思う。ディスプレイはAQUOSゆずりの美しいものだったし、カメラを撮影するときにディスプレイ部をくるりと回してディスプレイをファインダーにして実際のカメラのように写真を撮るのは結構好きだった。Bluetoothも快適に動いた。購入から数年経つ今も、一度の充電で数日待ち受け可能だ。

アメリカのiPhone
ところが、最近はiPhoneの爆発的な普及のおかげで、アメリカでも3Gネットワークが当たり前になり、人々の携帯に対する要求もレベルが高くなってきて、アメリカで売られている携帯電話の質はかなり高くなった。iPhone登場の前後で全く状況が違うので、3G黎明期の低機能携帯主流時代を iPhone前、3Gが当たり前になってきて人々が高機能携帯を手にするようになった時代をiPhone後と呼びたい。iPhoneBlackBerryを除く現在のアメリカ携帯電話の機能はだいたいのところ日本でいう2006年〜2007年ぐらいだと思う。(ただし、その後の日本携帯業界の発展については自分は実際に経験していないので、伝聞に基づく。)

iPhoneアメリカの高機能携帯市場をがらりと変えた。数年前、大学へ向かうバスの中で携帯電話で話さないで画面に見入っていじっている人を見ることはあまりなかったが、現在は半分以上の学生がiPhoneを始めとする何らかの高機能携帯をいじっている。ほとんどの学生が、見た目のよい携帯を持っている。Googleのアンドロイドベースの携帯はT-mobileとVerizonから売り出されている。VerizonのドロイドはiPhoneと同じような機能を備えている上、テーマなどをカスタマイズできるし、Googleの音声道案内を使えるなど、iPhoneにとっては初めての本格的なライバルだといえる。そして、今月出たnexus oneは最新バージョンのアンドロイドを使っているらしいし、アンロックバージョンだってiPhoneに比べればリーズナブルな価格だ。CESでのレポートによるとドロイドよりも軽量で日本語も選べるらしい。これは画期的だ。

iPhoneはちょっと高いかなという人のために(契約すれば初期投資はほどほどの値段で済むのだが)、見た目がiPhoneなタッチパネル商品や大画面ディスプレイ商品がたくさん出ている。LGやSamsungのものなどは人気がある。

アメリカの携帯業者の商売方法
at&t を始めとするアメリカ携帯電話業界は日本と同じような商売方法をとっている。つまり、携帯電話を格安あるいはほとんどタダで売り、その分を携帯の契約で回収するというものだ。こちらの基本料金はかなり高い。データやメール一切なしのコースでも月40ドルはするのだ。一年契約や二年契約などがあり、契約をする人だけが格安の端末を手にすることができる。結局は新しい端末を使っていないデータ契約一切なしの人も含めて、そういう加入者数を増やすための高い人気端末代を月々分割して支払っているわけだ。日本の業者はそのへんの情報開示は結構オープンで、ユーザーも月々どのぐらいが料金に上乗せされているのかなど分かっていることが多いが、こちらの料金体系はそういうことが分かりにくいようにデザインされている。やや年配で非都市部に住んでいる人が、電話機能しか使わないのに月々50ドルぐらい払っているのを見ると心が痛む。正直、こちらの電話会社は日本の物よりもevilだと思う。

ほんとうに節約したい人は、大手携帯業者ではなく、VoIPベースの携帯会社を使ったりもする。この場合、市内電話だけとかいう限定サービスもあったりしてお得ではあるが、音の質が悪かったりすることもある。あまり電話を使わない人向けに、契約をしなくてもいいプリペイドサービスがある。自分は契約なしのプリペイドSIMを使っていたこともある。T-mobileat&tのものだ。ご存知のように、プリペイドの場合は、月々の定額料金はない。ほとんど電話を使わないという人はこれでかなり安く押さえることができるが、少し話すとあっという間に時間が無くなっていくので要注意である。アメリカでは携帯に受信料も発生するので、誰かが自分の電話にかけてきて30秒話したら25円引かれるという具合だ。「呼び出しを二回ぐらいしてくれれば、スカイプからかけ直すよ。」なんていう寂しいこともあり得る。

日本発のインターネット記事で、アメリカではアンロック携帯が普及しているというようなものを見たことがあるが、一般人の様子はそれとはかなり違う。アンロック携帯を使っている人はギークか、余分なお金があってガジェットが好きな人か、だれかのお下がりの旧機種を使っている人ぐらいである。正直なところ、学生やアメリカ人の親戚でアンロック携帯を使っている人を知らない。強いて言えば自分ぐらい。この点も日本と同じような感じだ。携帯&アンロックとググってみると、たくさんの業者が出てくる訳だが、それは万人向けという訳ではない。

SIMロック携帯
日本と同じように、携帯業者はSIMロックで囲い込みをする。今回at&tで入手したc905aは、Wifiを備える機器だが、at&t版ではwifi機能がロックされている。これは本当に残念なことだ。at&tはデータサービス契約が欲しいので、wifiのハードがあるのにその機能をロックしたのだ。もちろんロックを解除してfirmwareを書き換えるというようなクラックを行えばwifiの機能は使えるのだと思うが。この点は3Gネットワークの飽和対策にwifi機種をラインナップしているソフトバンクなどとは大きく違う点だ。アメリカは広いので日本よりもHotSpotの密度が低い。だからwifiを使えるようにしたところで、データ通信契約が大きく打撃を受けるとは思えないのだが。それでも、聞くところによると、アメリカでもカリフォルニアなどの人口密集地域では3Gネットワークが飽和状態で遅くなったりしているらしいし、この辺でソフトバンク方式を取り入れてwifi対応機器を押し出してもよいのでは?

Wifi以外にも、c905の魅力的な機能はほとんどat&tによってロックされている。いずれアンロックしようと思うが、at&tはユーザーが使っている機種や状態をリアルタイムでチェックしているので、もう少し調べてからにしてみたい。こういう技術には投資しても、ユーザーサービスに直接つながる投資はあまりしない模様。本末転倒という感じ。じつはat&tの電話の着信拒否機能もat&tによってロックされていて、着信拒否したい時には月5ドルのサービスを追加しなければならない。(at&tに「訴えますよ」としつこく苦情を言った友人は、電話口でサービス担当者がその機能のアンロックコードを送信し、電話機の着信拒否機能が使えるようになったという、とんでもない話もある)