ネアンデルタール人とホモサピエンスの交雑の絵図−比較

DNAを使用した解析で、現在の人からネアンデルタール人のDNAが含まれていることが分かったという報告がありました。各種ニュースが取り上げていたのですが、各記事のポンチ絵に一貫性がないのが面白いと思ったので取り上げてみました。

まず朝日新聞。シンプルながら比較的分かりやすい絵となっております。5万年〜10万年あたりのところで「中東」という一言が書かれているのが特徴的です。原論文を読んでいないので、自分にはこれが本当かどうかは判断できませんが。左から右への時系列というのは、横書きのインターネット記事の中の図としては入りやすい構図だと思います。「アフリカに残ったヒト」と「出たヒト」という記述は、それなりに論点が分かった人が図を作成したことを暗示しています。

次は毎日新聞。この図も左から右への時系列という点では朝日新聞のものと同じグループに属します。「混血の可能性」という記述は、まだ結論に及んでいない模様の論文の記述を反映した注意深い表現です。しかし、「アフリカのヒト」と「以外のヒト」という記述は、アフリカからホモサピエンスがほかの地域へ拡散して行ったという有力な論説を無視してしまっています。ちなみに、毎日の図は他のものにある「3万年前」というネアンデルタール人の絶滅時期がありません。一番左にある「人類の進化」という記述は、それ以前の類人猿などの進化を含むものを包括しているのか、この図のタイトルなのかいまいちはっきりとしません。

最後は読売新聞。この図は理解するのに少し時間がかかりました。まず、下から上への時系列となっている時点で自分は混乱してしまいました。あと、ハッシュとつぶつぶの網掛けが何を意味するのか最初戸惑いました。どうやらハッシュがホモサピエンスのDNA要素、つぶつぶがネアンデルタール人のDNA要素ということのようです。ヨーロッパ人とアジア人、アフリカ人を左右で分けてしまっているのは誤解を招くと思います。この図を見ると、まるでアフリカ人とヨーロッパ人&アジア人がまったく違う人類のように見えてしまいますが、実際のところ同じ人類です。

各社まちまちなのが、共通の祖先からネアンデルタール人ホモサピエンスに分岐するところの年代です。
朝日: 50万年前
毎日: 50万年前以降
読売: 30〜40万年前

きっと学術界でもこの年代に関しては諸説あるのでしょう。毎日が○○年前ではなく○○年以降という記述で統一しているのも気になります。

さらに、ネアンデルタール人ホモサピエンスが交雑したであろう年代は次のとおり。
朝日: 5万〜10万年前? (?マークの使用は、昔ながらのうまいやり方ですね。)
毎日: 8万年前以降
読売: 10〜5万年前

朝日と読売は言っていることは同じなのですが、5と10が逆になっています。読売は、過去から現在ということで10から5万年前と言ったのでしょうが、これはあまり普通の記述法ではないと思います。さらに同じ図の中で30〜40万年前と言ってしまっているので、一貫性がありません。さらに、細かいことを言えば、10〜5万年という記述ではなく、10万〜5万、あるいは10万年〜5万年という記述方法が学術論文などでは推奨されています。10年前と思う人(そんなにいないと思うけど)が出てきてしまうかもしれないという配慮の上です。それにしても、なぜ毎日だけが8万年以降なのでしょうか。この時期は話題になっている論文に書かれているものなので、同じでなくてはおかしいと思うのですが。

同じことを説明するための絵ですが、各記事でかなりの違いがあることに驚かされました。まぁ、人に頼らず自分で論文読んで判断してねっていう新聞社からのメーッセージかもしれませんね。