BlockBuster破産のニュース

Grossauge2010-09-28

日本の大手のニュースソースが流す国外のニュースというのは、自分で取材したものでなくAPとかどこかのものを流用しているだけだ。特に日本が直接かかわらないニュースはほとんど無責任といってよいほどだ。

たとえば、DVDレンタルのBlockBusterが破産申請(チャプター11)したことに関して、どこもかしこもコピー&ペーストしたかのように、「ネット普及で破綻」という内容をたれ流している。実際はBlockBusterはネット云々以前の問題で、顧客の需要の変化を知っていながら従来の店舗や従業員がたくさんありすぎてうまく組織を改造することができなかっただけだ。

90年代からケーブルテレビや衛星放送が普及して、ハードドライブ内蔵型のチューナーをみんなが使うようになった。だから録画したものを見るだけで結構おなか一杯になる。番組検索も結構充実している。そして、最近はケーブルや衛星放送のオンデマンドサービスが充実してきたからなおさらだ。「インターネット」そのものの普及というよりは、ブロードバンドの普及がテレビや映画の家での楽しみ方に変化を与えてきたのだ。

自分のような貧乏学生の世帯でさえ、Tivo(日本語読みはティーボ)を介してしかテレビを見ないのだ。Tivoは機種によってはBlockBusterのオンデマンドも提供していたはず。BlockBusterだって、時代の変化を知らなかったわけではないのだ。80年代にあまりにも大きくなりすぎて、思い切ってリストラできなかったことが敗因だ。そして、もう一つの大きな要因は、NetFlix(ネットフリックス)に顧客を奪われていることだと思う。実際のところはわからないけれども、そういう感じがする。NetFlixは店舗を持たない。その時点ですでにBlockBusterに勝利している。月定額で、郵便(翌日配達あり)やインターネットで動画がレンタルできるのだ。アメリカではほとんどの地域で店舗に行くには車で運転して出かけなければならないので、配達できるのにわざわざ店舗を構えるというのはもう時代遅れのビジネスモデルなのだ。インターネットの普及よりも重要なのがロジスティクスの充実なのだ。

インターネットのオンデマンドサービスを使用されている方は重々承知だと思うが、本当に見たい映画はまだまだオンデマンドでは見られないことが多い。iTuneだって同じ。そういう映画に限って著作権関係で映画会社がオンデマンドを許可していないのだ。で、近所のBlockBuster店舗に出かけてもその品揃えはかなり貧弱(大都市のBlockBusterの品揃えはましだと思うけれども)。何も見つからない。ほかの店舗や倉庫にあるのを取り寄せても結局次の日以降だ。それだったらNetFlixを最初から使おうということになるのだ。まぁそれ以外にもあの手この手があるのだけれども。近い将来、映画会社が行っている現行の著作権管理は時代遅れになり、すべてオンデマンド経由配信が可能になるだろう。そういう場合にもNetFlixは実物の配達とオンデマンドに二股をかけていて、店舗を持っていないので強い。となると、次の流れはゲーム販売店GameStopの破産か。ゲーム専門店で店舗を展開しているということ自体があまりにも20世紀的だ。

というわけで、このBlockBusterのニュースは、「ネットの普及で破綻」というニュースがいかに無責任で報道機関として恥ずかしいものであるかということがよくわかる一件だと思う。