大学で中国人の出産ブーム

昨年から友人を含め自分の所属する研究所の中国人の出産ブームが続いています。去年は大学院生とポスドクが三人、今年はポスドク二人と男性ポスドク二人の妻が出産します。アメリカ人の秘書もその爆発的なブームに驚いているようですが、その背景について知っている人は少ないようです。自分は中国人の友人から色々生々しい事情を聞いているので、まわりの人々より少し事情に詳しくなっています。

子供はアメリカで産みたい
ご存知、中国には一人っ子政策というのがありますが、アメリカで産んだ子供はカウントされません。なので、賄賂なしで二人以上の子供を持つことができるわけです。なので、夫婦でアメリカの大学に来たら、まず子供の計画を立てなくちゃね。という人が結構多いのです。この研究所ではまず一人が出産して産みやすい環境だったということもあり、われもわれもという感じになっています。ちなみに、中国で80年以降に産まれたのに三人兄弟という学生がいましたが、それは賄賂によって可能だったそうです。その学生は中国人留学生では珍しく、中国人とあまり一緒に行動していませんでした。深いことは聞きませんでしたが、何か事情が会ったのかもしれません。

アメリカで子供を産んで中国での苛烈な競争から遠ざけてやりたい
人口の多い中国では、子供の頃から苛烈な学歴競争が存在します。よい教育を受けるには、人口の多い都市部で産まれたり、先生に好かれたり、お金持ちであったりなどの条件が必要になります。中国ではどこで産まれたかということが後の人生に大きく影響するようです。社会保障や行ける大学などは、出生地(戸籍?)に左右されるとのこと。例えば、北京などの大きな都市では有名大学(北京大学や精華大学など)に行ける学生数の枠が、地方都市よりも断然多いのです。ある地方都市の精華大学枠が2人で、北京の精華大学枠が100人だったとします。その地方都市の秀才が統一テストのようなもので3番になったところ、北京で90番の生徒よりもよい成績にも関わらず、精華大学には行けずに、その下のレベルの大学に行かなければならなく、北京で90番の学生が精華大学に進学できるというような不公平が存在するのです。そういった不公平に、さらに金持ちや有力者のコネというものがたくさん存在するのですから、たまったものではありません。社会保障も都市部か農村部かでもらえる額が全然違うということで、ある北京出身で農村部出身の人と結婚した友人は、「私の旦那さんはラッキーだわ。私が北京出身だからね。」なんて言っていました。
北京出身だからといって安泰なこともありません。先生に好かれなかったらいい学校に進学できなかったりするので、親は大変です。賄賂も横行しています。たとえ賄賂に関与しなくたって、コネは必須です。コネを作れない親は親失格?とまでは言いませんが、話を聞いているとそういう風潮もあるように感じられます。例として教えてもらった話のなかに、高校の入学試験では体力テストがあるらしいのですが、腕立て伏せが規定回数どうしてもできないという生徒は結構いるらしく、コネや賄賂で乗り越えるというものがありました。

さて、こんな不公平でストレスの多い競争を乗り越えてきた人々は、できるなら子供を同じ環境に置きたくないと考えるのが自然でしょう。アメリカで産まれれば、自然と市民権も得られますし、アメリカでもっとよい教育をずっと簡単に受けることができます。

そんな背景もあり、私のまわりでの中国人の出産ブームは続いているのです。中には、こちらで育てられないので中国の親の元でしばらく育ててもらっているという人もいます。子供が産まれると、両親や片方の親が代わる代わるビサを取ってアメリカにやってきて面倒を見ます。友人曰く、親が子供の子(孫)の面倒を見るのは義務のようなものだそうです。ビサは面接を受けたりいろいろ手間がかかります。また、「赤ん坊の世話のために渡米する」ということは面接で言ってはいけないらしく、ただ観光などという目的にするようです。ビサは6ヶ月滞在です。

ま、他にもいろいろな背景があるのですが、あまり語られない裏話を聞いたので書き留めておきました。いろいろな考え方があると思いますが、さすがに子供を産んで日本に送って面倒を見てもらうというようなことは自分はしないだろうなと思います。そんなこと言ってるから年を取って子供を産めなくなるんだと言う人もいるでしょうが...